本を書く理由 その3

28/May/2024 in Tokyo

本を書く理由:
既存の本が「真実」を語っていないと思うから。そして自分の「真実」を世に問うてみたいから。


本を書くというのは大変な作業である。

時間も労力も、割りに合わないほどかかる。

しかしすべての本が「真実」を語っているとは限らない。

いやむしろこういうべきであろう。著者の考える「真実」と、読者である私の考える「真実」が異なっていると。

あるいは世に流布する「真実」、わかりやすい言葉でいえば「常識」「当たり前」「〜であるべき」が、実はちっとも「真実」ではないと知ってしまったとき。既存の本が「真実」を語っていないと気がついたとき。


人間はどんなことでも「正しい」と考えられる。

しかし「他の人はまったく信じていないけれど、この世の中で少なくとも自分だけはそう考えている」という状態に不安を覚えない人間は、いない。

「正しい」と自分自身で本当に受け入れるためには、他の人からも「正しい」と認めてもらう承認が必要なのである。

不思議である。なぜ自分を、自分ひとりだけでは信じられないのだろうか。

しかし、たったひとりでは自分自身を信じられないのは、人間が根本的に社会的な動物であり、社会、つまり他者とのつながりのなかでしか生きられないことの紛れもない証であるようにも思える。

他の人から批判されたり、拒絶されたりすることに不安を覚えながらも、それでも自分が正しいと信じることを世に問うこと。

そしてそれを他の人に受け入れてもらうことで、ようやく自分自身に対して「ああ、やっぱり自分の考えていたことは正しかったんだ」、「これが真実だったんだ」と言えること。

それが本を書く理由である。