艶っぽい声

31/August/2025 in Kraków

*English ver

2003年の8月から22年が経つ。

この22年間、私はある歌手のことがずっと好きだ。

しかし彼の声を、彼の声「だけ」を初めて魅力的だと感じたのは、今からわずか数ヶ月前のことだった。

曲を聴いていて、「艶っぽい声」だと初めて思った。

初めて「官能的な声」だと思った。

私はずっと、彼の声よりも詩やメロディ、そしてふるまいに目を奪われてきたのである。


思い返せば、私が初めて「魅力的な声」だと思ったのも彼の声ではなかった。

彼が強い影響を受けたとする別の歌手の曲を聴いていて、その声の魅力に引き摺り込まれた。

その声をある雑誌は「暗黒ビブラート」と形容していたが、「暗黒」という言葉以外に相応しい表現がないと思わされる深淵な声だった。

その暗黒の魅力は妖しかった。


共通しているのは、どちらの声も高音の、クリーンな声であることだ。

しかしそれが「透明感」や「健康」というイメージにはまったく結び付かず、強く「背徳的」で深く「暗闇」なイメージをもって妖しく響く。

ギラギラした皮膚をもった蛇のような声なのである。