本を読めば読むほど莫迦になり

7/May/2024 in Tokyo

『本を読めば読むほど莫迦になり』

かつてどこかで目にしたこのフレーズ。

なぜ本を読むほど莫迦になるのか、その解釈はさまざまできるだろうが、私はいま次のように考えている。

本の中には秩序がある。

本というのは、現実のある場面を切り取り、その手のひらに収まるような小さな空間を言葉で説明しようとするものなのだから。

その小世界にだけ通用する秩序を構築するのは、簡単ではないが、不可能ではない。

書かれていることはすべて一本の線の上にきれいに並んでおり、読むとはその線をたどっていくことだ。

このような本というものに対し、私たちを取り巻いている現実世界は広大で、はるかに複雑である。

さらに私たちには意識というものもある。

意識に浮かぶものは数え上げることすらできない。

数秒前に考えていたことを忘れているように、そうかと思えば宇宙のはるか彼方の惑星の様子を思い浮かべているように、意識の湖に映るものは多様で、絶えずうつり変わり、そして千々と乱れている。

私たちの意識は「秩序」だけでなく、「空間」「時間」といった制約すらも免れている。

そのような意識、すなわち私たちの「現実」に対処する力は読書だけでは得られず、むしろ読書だけをしていたら衰退していくのは確かであり、それが「本を読めば読むほど莫迦になり」のひとつの意味であろう。