by axxxm
7/July/2024 in Tallinn
エストニアはタリンに着いて4日目。
歴史的な円安という要因も大きいが、円で稼いでる身にとっては、この国の物価は非常に高く感じる。そしてこの国に「北欧」という印象を抱く。「高い物価」と「生活の質の高さ」という北欧のイメージを思い出す。しかしエストニアにこのようなイメージを抱くことは、ある違和感も運んでくる。
エストニアが「北欧」に含まれるとする見方は私独自のものではない。そう唱える人は世界中にいる。しかし多くの日本人にとって、エストニアはまず「バルト三国」というカテゴリーに入る。そして「バルト三国」は旧共産圏、つまり「東欧」というカテゴリー内にある。
そもそも私がエストニアに、つまりバルト三国に興味を抱いたのは、これらの国々が「東欧」という言葉でまとめられていたからである。もしエストニアが「北欧」であるという見方に私が最初に触れていたら、この国に来ようとは思わなかったであろう。私は北欧諸国に興味を惹かれないからである。私は「東欧」という言葉の孕むイメージに引きずられてここまで生きてきたからである。あの悲しげで、灰色で、退廃的で、メランコリックなイメージに。
実際のところ、エストニアの物価はバルト三国の中でもっとも高く、さらに北欧のスウェーデンやフィンランドよりも高いものがあるという。街の発展具合を見ても、この国が「北欧」に含まれることは間違いないだろう。しかし北欧諸国とひとつ大きく異なるのは、中心部をすこし出ると漂ってくるソヴィエトの残り香である。あの古い、醜い、汚い、共産主義的な住宅団地である。ここに私は、エストニアは少なくとも一度は間違いなく「東欧」であり、そして何人もその歩んできた歴史を消すことはできないという条理を見る。