by axxxm
21/January/2024 in Tokyo
人生楽しいな、と感じる一瞬がさっきあった。
点がつながって線となる瞬間だった。
旅行で楽しいのは、それまで知らなかった「美しいもの」「魅力的なもの」に出会ったときだろう。
数日前までいた京都でもそんなことがあった。
伏見稲荷の土産物屋。
何気なく見ていたポストカードの棚で、妖艶な日本画を見つけた。
上村松園という画家の『花がたみ(1915)』という絵。
画家の名も、絵も知らなかった。
身体つきの細い、着物の女を描いたこの絵はどこか現代風で、それが妖怪じみた雰囲気を高めている。妖しく美しい。
すぐにこのポストカードを購入した。
京都滞在中、「Ihei Kimura(木村伊兵衛)」という写真家の写真を数枚つなげてショートームービーにした動画を目にした。
その中の一枚。
強く惹かれた。
寺で、着物の若い女が、目を閉じて、手を合わせて祈っている様子を、ななめ後ろから撮ったモノクロの写真。
一途。一心。誠実。敬虔。純粋な祈り。若い女。
着物の柄は隠れて見えない。
しかし髪飾りがとても豪華で、これが若い女の輝きをどれだけ高めているか知れない。
豪勢な髪飾りと巻いた複雑な髪の毛に、私には、このような仕立てを手伝ってくれた誰か……たぶんこの女の母親か、着物屋の老婆か……の、女に対する愛のようなものすら見える気がした。
本当に、黒い髪は美しい。
本当に、着物の女は美しい。
本当に、日本の女は美しい。
この写真を、スマートフォンの小さなスクリーンではなく、写真集の大きな判型で見たいと思った。
図書館で、木村伊兵衛の本を開く。
着物の女の写真を探してページをめくっていると、谷崎潤一郎の写真があった。
木村伊兵衛は谷崎の写真も撮っていたのだ。
一気に親近感が湧いた。
別のページには、上村松園を撮った写真も見えた
なにか、点がつながったような感覚があった。
こんな些細な理由から生まれるには大きすぎると思えるほどの楽しさ、興奮が身体を走った。
別の写真集を開くと、先ほどとは別の、和装の谷崎が少し身をのりだして写っている写真があった。
多くの本で目にする谷崎の写真だった。
この写真を撮ったのは木村伊兵衛だったのだ。
この谷崎の写真を今まで何度も目にしてきて、「誰が撮ったのだろう」なんて考えたことは一度もなかった。
しかしいきなりその「答え」が出てきた。
まったく別のものを探しているときに「答え」が出てきた。
そこで私の身体を一瞬かけ抜けた「人生、楽しいな」という鮮烈な感覚。
その理由はなんだったのだろう。
……上村松園、「花がたみ」、木村伊兵衛、着物の女の写真といった「美しさ」との出会い
関係ないと思っていたものが実は関係していたこと
それまで知らなかった「つながり」の存在を知ったこと
目的のもの(着物の女の写真)を探している途中、寄り道で発見をしたこと
真の楽しさは、「目的」を達成したところではなく、目的へと進む「途上」にあること……
……そんなことを思った。